お悩み:不動産をどうやって相続・分割する?揉めない方法は?
遺言書や相続の話になると、多くの人が直面する問題の一つが 不動産の相続 です。「誰がどの不動産を相続するのか?」は、相続人同士のトラブルに発展しやすいテーマでもあります。
ここでは、不動産を相続する際に知っておきたい 分割方法の種類や注意点 を、相続人が3人(Aさん・Bさん・Cさん)いる場合を例に解説します。
不動産は必ず1人で相続しなければならない?
不動産は現金のように簡単に分けられるものではありませんが、必ず1人が相続しなければならないわけではありません。相続の方法として主に以下の4つがあります。
- 現物分割
- 共有分割
- 換価分割
- 代償分割
現物分割
土地を複数に分筆し、相続人がそれぞれ取得する方法です。見た目には平等に分けられますが、いくつかの問題があります。
- 土地の形状:整形地でない場合、資産価値が変わる可能性があります。
- 処分性:狭くなった土地は売却しにくくなることがあります。
- 費用・時間:分筆には登記費用や測量費用、手続きに時間がかかります。
- 建物の分割:建物を物理的に分けることは困難です。
事例
Aさん・Bさん・Cさんが実家の土地(200㎡)を相続する場合、土地を3分割してそれぞれ約66㎡ずつ取得することにしました。しかし、分割後の土地の一部は奥まった細長い形状になり、将来的に売却しにくいという問題が生じました。
このように現物分割は平等に見えても、土地の形状や将来の売却性に注意が必要です。
共有分割
不動産を相続人の持分ごとに名義上で共有する方法です。
- 例:Aさん1/3、Bさん1/3、Cさん1/3
- メリット:平等に分けられる
- デメリット:
- 売却には全員の同意が必要
- 一部相続人だけの持分を買いたい人は少なく、売却が難しい
- 売却価格や時期で相続人間で意見が対立することがある
事例
親から賃貸マンションを相続した場合、Aさん・Bさん・Cさんで共有名義としました。しかし、Aさんは「売却して現金化したい」と考え、Bさん・Cさんは「貸し続けたい」と意見が割れ、数年間話し合いが続いたというケースがあります。
換価分割
不動産を売却して、その代金を相続人で分ける方法です。
- メリット:
- 固定資産税や管理の手間が不要になる
- 金銭で公平に分割可能
- デメリット:
- 遺産分割協議で相続人全員の同意が必要
- 売却代金が期待通りにならない可能性がある
- 信頼できる人が売却手続きを行わないと不利益が生じるリスク
事例
Aさんが実家の土地を一旦取得して売却し、売却代金をBさん・Cさんと分ける方法を取りました。売却額は希望より少なかったものの、現金で公平に分割できたため、後々のトラブルは回避できました。
代償分割
特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に現金や他の財産で代償する方法です。
- 例:Aさんが3,000万円相当の土地を相続 → Bさん・Cさんに1,000万円ずつ現金で支払う
- メリット:不動産を1人で相続したい場合に有効
- デメリット:
- 代償金を支払える資産が必要
- 不動産の評価額を相続人全員で合意する必要がある
事例
Aさんが自宅を相続する代わりに、BさんとCさんに銀行預金から代償金を支払うことで分割しました。これにより、Aさんは住み慣れた家に住み続けつつ、Bさん・Cさんも公平に財産を受け取れました。
不動産相続でよくある実務の注意点
- 居住者優先:不動産に居住している相続人が取得することが多い
- 貸家や賃貸物件:家賃収入・敷金・管理費などを考えると複雑になる
- 事前の意向確認:生前に相続人に希望を確認すると揉めにくい
- 専門家の活用:弁護士・司法書士・行政書士などの相続専門家に相談することが安心
まとめ
- 不動産の相続方法は、現物分割・共有分割・換価分割・代償分割の4種類
- それぞれメリット・デメリットがあり、どれを選ぶかは状況次第
- 生前に遺言書で意思表示をしておくと、将来のトラブルを避けられる
- 相続人全員の合意や専門家のアドバイスを得ることが、円滑な相続の鍵
不動産の相続は「揉める前に備える」ことが何より重要です。事例を参考にしつつ、専門家と相談しながら自分の財産を誰にどう相続させるかを考えておきましょう。
