平等な相続とは|本当に「みんな同じ」だけが平等なのか?
相続のご相談を受けていると、「子どもたちに平等に相続させたい」というご希望をよく耳にします。
また、遺産分割協議でも「兄弟で平等に分けよう」と話し合っていても、いざ具体的に分ける段階になると、思っていた以上に難航することが多いのです。
この記事では、「平等な相続」とは何か? そしてどうすれば平等に近い相続を実現できるのか? を、行政書士の視点でわかりやすく解説します。
「相続で揉めたくない」「遺言書を作るときの参考にしたい」という方は、ぜひ最後までお読みください。
平等な相続とは?
多くの方が考える「平等な相続」とは、各相続人が同じ金額を相続することでしょう。
たとえば、相続人がAさん・Bさん・Cさんの3人で、相続財産が現金6,000万円の場合、それぞれ2,000万円ずつ分けるのが“平等”だと考えるのが一般的です。
しかし、現実には相続人それぞれの経済状況・健康状態・家族事情が異なります。
もしCさんが病気がちで仕事ができない状況であれば、「Cさんに少し多めに相続させたい」と考える人もいるでしょう。
このように、「金額の平等」と「実質的な平等」は必ずしも一致しません。
だからこそ、本当の意味での平等な相続を実現するのは難しいのです。
平等な相続が難しい理由
① 相続財産の内容によっては平等に分けられない
預貯金のように金額が明確な財産なら、単純に頭割りすれば平等に分けられます。
しかし、不動産・自動車・株式・骨董品など、金額を明確に評価しにくい財産は、そう簡単にはいきません。
不動産の場合、評価証明書に記載された価格と実際の市場価値が異なることもあります。
また、山林や空き家など、維持費や管理コストがかかる不動産は「実質マイナス資産」になることも。
一方で、先祖代々受け継がれた土地や家は、感情的な価値が高く、単なる評価額では割り切れません。
② 財産の中には「想い」や「愛着」が含まれる
自動車や時計、思い出の品などは、たとえ金銭的価値が低くても「気持ちの面」で大きな価値を持ちます。
この“感情の価値”をどう平等に扱うかは、非常に難しい問題です。
③ 生前贈与(特別受益)が影響する
過去に被相続人が一部の相続人にだけ多額の援助をしていた場合、それは特別受益として調整する必要があります。
ただし、贈与した時期や内容によっては、調整しても「公平感」が得られないこともあります。
(例:株価が安いときに株を贈与 → 相続時に株価が急騰して不公平感が生まれる、など)
平等にできないとどうなる?
「兄が親の介護を全てしてきたのに、音信不通だった弟と同じ相続分なのは納得できない」
「妹は大学費用を出してもらっていたのに、自分は高校を出てすぐ働いた」
このような感情の不公平が、やがて遺産分割トラブルや家庭裁判所での調停に発展することがあります。
相続の金額が大きくなくても、兄弟姉妹の関係が悪化するケースは決して少なくありません。
平等な相続に近づけるための方法
完全な平等は難しいものの、次のような工夫で「納得感のある相続」に近づけることができます。
① 遺言書で相続分を明確にしておく
最も有効なのは、遺言書を作成しておくことです。
遺言書で相続分を具体的に指定すれば、相続人同士のトラブルを大幅に防ぐことができます。
遺言書を作成するときは、次の点を確認しておくことが大切です。
- 自分の財産を正確に把握する
- 生前に贈与した金額を整理する
- 生命保険の受取人と金額を確認する
- 相続人それぞれの生活状況を考慮する
これらを踏まえて「なぜこのように分けるのか」を文面で補足しておけば、相続人の理解も得やすくなります。
② 財産を現金化しておく
不動産や自動車などの分割が難しい財産を、生前に売却して現金化しておく方法もあります。
預貯金であれば単純に割り振りができるため、手間のかからない平等な相続を実現しやすくなります。
平等な相続を考えるときのポイントまとめ
- 「金額の平等」と「実質的な平等」は異なる
- 不動産などは評価が難しく、感情の問題も絡む
- 生前贈与(特別受益)も不公平感を生む要因となる
- 遺言書を作成して相続分を明確にしておくことが重要
- 財産を現金化しておくことでトラブルを減らせる
行政書士からのアドバイス
相続は「お金の問題」だけでなく、「家族の気持ちの整理」でもあります。
平等に分けることよりも、みんなが納得できる形で受け継ぐことが本当の意味での“平等な相続”といえるでしょう。
奈良で遺言書作成や遺産分割に関するご相談をお考えの方は、行政書士がサポートいたします。
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