相続問題の具体例と防ぐためのポイント|行政書士が解説
「相続問題」と一口に言っても、その内容は家庭によってさまざまです。
遺産の金額や家族関係、相続人の人数などによってトラブルの形は異なります。
ここでは、実際によくある相続人同士のトラブルの具体例を挙げ、あわせて防ぐためのポイントを行政書士の視点から解説します。
遺言書の内容が不公平と感じるケース
遺言書は被相続人の意思を反映した重要な書類ですが、相続人から見ると「不公平だ」と感じることがあります。
たとえば、「長男に自宅を全て相続させる」といった内容の場合、他の相続人が不満を持つことも少なくありません。
また、「遺言書が本当に有効なのか」「本人の意思で書いたのか」といった有効性をめぐる争いに発展することもあります。
防ぐためのポイント:
- 遺言書に「なぜこのような内容にしたのか」という理由(付言)を添える
- 公正証書遺言にして形式的な不備を防ぐ
- 専門家に相談し、法的に有効で納得感のある内容に整える
遺産分割協議で意見が対立するケース
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。
しかし、「生前の世話をしたから多くもらいたい」「学費を出してもらった分は減らすべき」など、それぞれの主張がぶつかることもあります。
さらに、相続人の配偶者が話に加わると感情的になり、話し合いが難航することもあります。
防ぐためのポイント:
- 感情的な主張よりも法的な相続分を基準に冷静に話す
- 第三者(行政書士・弁護士など)を交えて調整する
- 争いが避けられない場合は、家庭裁判所の調停を利用する
不動産の相続で揉めるケース
自宅などの不動産は、相続トラブルの代表例です。
「誰が住むのか」「どう評価するのか」「売却して分けるのか」など、判断すべき点が多くあります。
また、価値が低く管理費用ばかりかかる不動産、いわゆる“負動産”も問題になりがちです。
固定資産税や修繕費など、所有しているだけで負担になる場合もあります。
防ぐためのポイント:
- 生前に不動産の売却や活用を検討する
- 遺言書で誰がどの不動産を相続するか明確にする
- 不動産の評価額を第三者に査定してもらう
相続人が多数・知らない相続人がいるケース
相続人が多い場合、全員の同意を得るまで時間がかかり、遺産分割協議が進まないことがあります。
また、前配偶者との間に子どもがいた場合など、「存在を知らなかった相続人」が見つかるケースもあります。
こうなると、話し合いが複雑化し、相続手続きが長期化するおそれがあります。
防ぐためのポイント:
- 被相続人の戸籍をたどり、全相続人を正確に把握する
- 遺言書で承継方法を明記しておく
- 行政書士に相続人調査を依頼する
相続人の一人が財産を使い込んでいるケース
「親のお金を管理していた相続人が使い込んでいた」というトラブルも少なくありません。
年金の入金口座を管理していた相続人が、一部を私的に流用していたケースなどが典型です。
他の相続人からは「親のお金を勝手に使ったのでは?」という不信感が生まれ、相続争いに発展することもあります。
防ぐためのポイント:
- 管理者は帳簿をつけ、支出・残高を明確にしておく
- 通帳やレシートなどの証拠を保管する
- 第三者を交えた財産管理を行う
遺産分割協議後に新たな資産・負債が見つかるケース
相続財産のすべてを正確に把握するのは容易ではありません。
後から預金口座や借金が見つかることもあります。
この場合、新たに見つかった財産や負債の分だけ再度遺産分割協議を行う必要があります。
一度協議が終わった後で再び話し合いを行うのは、感情的な対立を招きやすくなります。
防ぐためのポイント:
- 生前に財産目録を作成しておく
- 遺言書で財産の分配を具体的に示す
- 相続後は速やかに財産調査を行う
その他の相続トラブル例
- 介護をめぐる不満:「長年介護したのに報われない」
- 遺留分侵害請求:遺言で自分の取り分が少なすぎると感じた相続人が主張
- 名義預金問題:親の預金口座を子が管理していた場合の扱い
- 共有不動産トラブル:相続後、共有名義になった不動産の処分で揉める
まとめ|生前の準備が相続問題を防ぐ鍵
- 相続問題には「不公平」「不動産」「相続人の多数」「財産の使い込み」など多様な種類がある
- 相続トラブルの多くは被相続人の生前準備で防ぐことが可能
- 遺言書や財産目録の作成、専門家への相談が有効
相続トラブルを未然に防ぐために、早めの対策をおすすめします。
行政書士は、遺言書作成支援や財産調査、相続人調査などを通じてスムーズな相続をサポートします。
