遺産分割協議がまとまらなかったら?|相続トラブル対策

 相続にあたって遺言書が残されていない場合、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、財産の分け方を話し合うことになります。

 しかし、相続人の思いや立場がそれぞれ異なるため、話し合いがまとまらないことも少なくありません。
 「自分は被相続人の世話をしてきたから多くもらいたい」「あの財産は自分が使っている」など、感情が絡むこともあります。

 ここでは、遺産分割協議がまとまらなかった場合にどうなるのか、その流れと対処法を詳しく説明します。


遺産分割協議がまとまらないときの流れ

 相続人同士で話し合っても意見が折り合わない場合、法的な手続きに進むことになります。
 その流れは次のようになります。


① 家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる

 相続人の一人が、家庭裁判所に対して「遺産分割調停の申立て」を行います。
 これは「話し合いでは解決できなかったので、裁判所で仲裁してもらう」という段階です。

 調停では、裁判官と調停委員(一般の有識者)が中立の立場で話し合いを進め、相続人同士が合意できるようサポートします。

💡 奈良県の場合、申立て先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
例:奈良市・生駒市 → 奈良家庭裁判所、橿原市・大和高田市 → 奈良家庭裁判所葛城支部。


② 調停期日で話し合いを重ねる

 調停は、概ね月1回のペースで開催されます。
 多くの場合、半年〜1年ほどかけて合意を目指します。

 この間に、調停委員を通じて各相続人の主張を整理し、公平な遺産分割案を作成します。


③ 調停が成立すれば「調停調書」が作成される

 全員が合意すれば、裁判所で「調停調書」が作成され、これが法的に有効な遺産分割の合意書となります。

 この調書に基づき、不動産の名義変更などの登記手続きが可能になります。


④ 調停が不成立なら「審判手続き」へ移行

 話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所が審判により最終的な分割方法を決定します。
 これは裁判所が「法律に基づいて判断」する段階で、相続人の合意は不要です。

 審判で決まった内容には法的拘束力があり、原則としてそれに従う必要があります。


⑤ 審判に不服がある場合は「即時抗告」

 審判の結果に納得できない場合、2週間以内に「即時抗告」を申し立て、高等裁判所の判断を仰ぐこともできます。
 ただし、ここまで進むと解決までに長い時間と費用がかかるのが一般的です。


遺産分割協議がまとまらないとどうなる?

 遺産分割協議が長期化・不成立となると、以下のような問題が生じます。

  • 不動産の名義変更ができず、売却や管理が難しくなる
  • 預貯金の払い戻しができない
  • 固定資産税や管理責任が宙に浮く
  • 相続人同士の関係が悪化する

 特に、不動産の相続登記が未了のまま長期間放置されると、
 「所有者不明土地」となり、将来的に処分が難しくなる恐れもあります。

💬 奈良県内でも、兄弟間で相続が進まず10年以上放置された土地が問題化するケースが増えています。


協議がまとまらない前にできること

 協議の段階でこじれそうな場合、早めの専門家相談が重要です。

 行政書士や司法書士が中立的な立場で「財産の整理」や「協議書案の作成」を行うことで、話し合いがスムーズに進むことがあります。

 また、事前に公正証書遺言を作成しておくことで、そもそも協議の必要がなくなり、争いを未然に防ぐことも可能です。

行政書士ができること

  • 相続関係図・財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成支援
  • 相続人調査・戸籍収集
  • 遺言書作成サポート

まとめ

  • 遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停・審判手続きに進む
  • 話し合いが長期化すると、時間・費用・関係悪化などのリスクが増す
  • 協議前の段階で、行政書士・司法書士などの専門家に相談するのが得策
  • 将来のトラブル防止には遺言書の作成が効果的

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