遺言書の種類と選び方|奈良の行政書士がわかりやすく解説

 相続に備えて「遺言書を作っておいた方がいい」と耳にすることはあっても、実際にどんな種類があり、どのように作成すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
 遺言書は、自分の財産を「どのように・誰に」残すかを明確にできる大切な書類です。適切に作成すれば、家族のトラブルを防ぎ、円満な相続を実現することができます

 この記事では、奈良の行政書士が、遺言書の種類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)とその特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。


遺言書とは?作成の意義と基本ルール

 「遺言書」は、遺言者が自分の財産を誰にどのように分けるかを指定する書面です。
 民法では、法定相続人法定相続分・遺留分が定められていますが、遺言書がない場合は、それらを基準に相続人同士で「遺産分割協議」を行うことになります。

 しかし、遺言書があれば法定相続人以外にも財産を渡すことができ、また法定相続分とは異なる割合で相続させることも可能です。
 そのため、遺言書を作成しておくことは、「自分の意思を確実に残す」「家族間のトラブルを防ぐ」ための最良の手段と言えます。

 なお、遺言書は後日撤回も可能です。「やはり内容を変更したい」と思った場合でも、法的に手続きを踏めば問題ありません。詳しくは「遺言の撤回・修正」をご覧ください。


遺言書の主な種類

 遺言書には複数の形式があります。代表的なものは次の3種類です。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

 このほか、緊急時にのみ認められる「危急時遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶遭難者の遺言」もありますが、ここでは一般的な3つの方式を中心に解説します。


自筆証書遺言

自筆証書遺言の作り方

 全文・日付・氏名を自筆し、押印することが必要です。
 たとえば、

  • 「預金を長男〇〇に相続させる」
  • 「自宅不動産を配偶者〇〇に遺贈する」
    といった形で、内容を明確に書きます。

 日付は「令和7年5月吉日」のような曖昧な表現は不可で、特定の日付を記載する必要があります
 氏名は住民票どおりが原則です。

 財産目録はパソコンで作成しても構いませんが、その各ページに署名・押印が必要です。

メリット・デメリット

メリット

  • 費用がかからず、自宅で手軽に作成できる
  • 自分のペースで作成できる

デメリット

  • 要件を満たさないと無効になるリスク
  • 紛失・偽造・改ざんの危険性

 ただし、「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、法務局で安全に保管され、検認手続きも不要になります。
 この制度を使うことで、紛失・偽造のリスクを大幅に減らすことができます。


公正証書遺言

公正証書遺言とは

 「公正証書遺言」は、公証人と証人2名以上の立会いのもとで作成される遺言書です。
 公証人が遺言者の口述内容を筆記し、正式な文書として作成します。

特徴とメリット

  • 公証人が作成するため無効になるリスクが極めて低い
  • 原本が公証役場に保管されるため、改ざん・紛失の心配がない
  • 検認手続きが不要で、すぐに相続手続きに進める
  • 字を書くことが難しい人でも作成可能

デメリット

  • 公証人手数料などの費用がかかる
  • 証人に遺言内容を知られる可能性
  • すぐに作成することが難しい

 証人には一定の資格制限があり、誰でもなれるわけではありません。詳しくは「遺言書の証人になれない人とは」を参照ください。


公証人手数料の目安

財産の価格手数料
100万円以下5,000円
100万円超~200万円以下7,000円
200万円超~500万円以下11,000円
500万円超~1,000万円以下17,000円
1,000万円超~3,000万円以下23,000円
3,000万円超~5,000万円以下29,000円
5,000万円超~1億円以下43,000円
1億円超~3億円以下43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円
3億円超~10億円以下95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円
10億円超249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円
遺言加算(全財産1億円以下の場合)11,000円
正本・謄本交付250円/枚

※相続人ごとの財産額に応じて計算し、合計した金額が手数料となります。
※証人2人分の手数料(1人あたり約10,000円)も別途必要です。


秘密証書遺言

 秘密証書遺言は、公証人と証人2名が「これは秘密証書遺言である」ことを証明する方式です。
 遺言の内容自体は秘密にでき、パソコンで作成・印刷した文書でも利用できます。

メリット

  • 遺言の内容を他人に知られずに作成可能
  • パソコンを使える人は自書不要で作成しやすい

デメリット

  • 公証人手数料(11,000円)が必要
  • 作成の手間があり、実務上は利用者が非常に少ない(年間100件程度)

 現在は自筆証書遺言の保管制度が整ったため、秘密証書遺言を選ぶケースは減少しています。


まとめ|自分に合った遺言書を選びましょう

遺言書にはそれぞれ特徴があります。

種類費用手軽さ信頼性秘密保持
自筆証書遺言◎ 無料△ 要件注意
公正証書遺言△ 費用あり◎ 最も確実×
秘密証書遺言○ 中程度

 どの方式を選ぶかは、費用・安全性・手間のバランスを考えて決めるのがポイントです。
 迷ったときは、行政書士などの専門家に相談することで、最適な遺言書の形を一緒に検討できます。


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