祭祀財産とは?相続財産との違いと承継のルールをわかりやすく解説
相続のご相談を受けていると、「仏壇やお墓は誰が引き継ぐの?」「相続放棄したら位牌はどうなるの?」といったご質問をよくいただきます。
実はこれらの仏壇・位牌・お墓などの祖先祭祀に関する財産は『祭祀財産(さいしざいさん)』と呼ばれ、預貯金や不動産とはまったく異なる取り扱いがされます。
この記事では、奈良の行政書士が、祭祀財産の意味・承継の仕組み・相続放棄との関係をわかりやすく解説します。
祭祀財産とは
祭祀財産とは、祖先をまつるために代々受け継がれてきた財産のことを指します。
代表的なものには、次のようなものがあります。
- 位牌(いはい)
- 仏壇・仏具
- 神棚
- 墓地・墓石
- 永代供養料や墓地の使用権 など
いずれも、金銭的な価値では測りにくく、共有や分割が難しい財産です。
そのため、祭祀財産は相続財産(預貯金・不動産・株式など)とは別扱いとされています。
つまり、法的には「相続財産」ではなく、特別に承継される財産という位置づけになります。
祭祀財産を承継するのは誰?
相続財産は通常、相続人全員で分割協議をして分けます。
しかし、祭祀財産は1人の相続人がまとめて承継するのが原則です。
この祭祀財産を受け継ぐ人を、法律では「祭祀主宰者(さいししゅさいしゃ)」と呼びます。
つまり、祭祀主宰者が祭祀財産の所有者となり、仏壇やお墓などを管理・維持していく立場になります。
祭祀主宰者はどのように決まるのか?
民法では、祭祀主宰者は次の順番で決められるとされています。
- 被相続人が指定する
- 慣習により決める
- 家庭裁判所が指定する
それぞれ詳しく見てみましょう。
① 被相続人が祭祀主宰者を指定する場合
最も確実なのは、被相続人(亡くなった方)があらかじめ祭祀主宰者を指定しておくことです。
遺言書や手紙などで「長男〇〇を祭祀主宰者とする」と記載しておけば、その人が引き継ぐことになります。
特に、複数の相続人がいる場合や遠方に暮らす家族がいる場合は、書面で明確にしておくことがトラブル防止に有効です。
② 慣習により決める場合
被相続人が誰も指定していない場合、その家に伝わる慣習に従って決められます。
たとえば、「代々長男が引き継いできた」「同居していた子が引き継ぐ」といった形です。
慣習といっても法律で定められているわけではありません。
実際には、相続人同士の話し合いで決定するケースが多いです。
③ 家庭裁判所が指定する場合
被相続人が指定しておらず、相続人の話し合いでも決まらない場合には、家庭裁判所に申し立てをして、
最終的に裁判所が祭祀主宰者を指定します。
家庭裁判所は、相続人の関係性や生活状況、これまでの祭祀の実情などを考慮して決定します。
相続放棄をした場合、祭祀財産はどうなる?
ここでよくある誤解が、「相続放棄をしたら祭祀財産も受け取れないのでは?」という点です。
結論から言うと、
👉 相続放棄をしても祭祀財産は承継できます。
なぜなら、祭祀財産はそもそも「相続財産」ではなく、別枠の財産だからです。
そのため、相続放棄をして預貯金や不動産を放棄しても、仏壇やお墓を引き継ぐことは可能です。
トラブルを防ぐためのポイント
- 祭祀主宰者を遺言書などの書面で明確に指定しておく
- 生前から、家族で誰が引き継ぐか話し合っておく
- 相続放棄を予定している場合でも、祭祀財産の扱いを確認しておく
これらを整理しておくことで、相続後のトラブルを大きく防ぐことができます。
まとめ|祭祀財産の承継は「思い」と「法」の両方から考える
- 祭祀財産とは、仏壇・位牌・お墓などの祖先祭祀のための財産
- 相続財産とは別に扱われ、祭祀主宰者が1人で承継する
- 祭祀主宰者は、被相続人の指定 → 慣習 → 家庭裁判所の順で決まる
- 相続放棄をしても、祭祀財産は引き継げる
奈良で遺言・相続・祭祀財産のご相談なら
祭祀財産は「お金では測れない大切な財産」です。
しかし、誰が承継するかをめぐって親族間で争いになるケースも少なくありません。
奈良で遺言書作成や相続対策、祭祀財産の承継にお悩みの方は、行政書士が法的・実務的な観点からサポートいたします。
ご家族の想いを大切にしながら、円満な承継を一緒に考えましょう。
