特別受益・持ち戻しとは|相続分を平等にするための仕組み
相続手続きでよく出てくる「特別受益」と「持ち戻し」ですが、聞き慣れない方も多いかもしれません。
特別受益とは、相続人が被相続人から生前に受けた贈与や財産のことで、相続分を計算する際に考慮されます。
この特別受益を相続財産に加えて計算し直すことを持ち戻しと呼びます。
特別受益の持ち戻しが必要な理由
例えば、被相続人の子であるAさんとBさんが相続人で、相続財産が4,000万円あったとします。
- Aさんは生前に被相続人から現金1,000万円を受け取っていた
- Bさんは何も受け取っていない
このまま法定相続分(2分の1ずつ)で分けると、AさんとBさんはそれぞれ2,000万円ずつとなり、Bさんは「不公平だ」と感じるでしょう。
そこで特別受益を考慮した持ち戻しを行うと、計算は以下のようになります。
- 総財産:相続財産4,000万円 + Aさんへの生前贈与1,000万円 = 5,000万円
- Aさんの相続分: (5,000万円 × 1/2) − 1,000万円 = 1,500万円
- Bさんの相続分: 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
このように、持ち戻しを行うことで相続人間の平等が保たれます。
また、被相続人が遺言書で特別受益の持ち戻しを免除することも可能です。
特別受益に該当するもの
民法では、特別受益として以下の贈与が定められています。
- 遺贈:遺言による財産の贈与
- 婚姻のための贈与:結婚資金としての贈与
- 養子縁組のための贈与
- 生計の資本としての贈与:家の購入資金や学費など
ただし、日常生活費やお小遣いなど通常の扶養範囲内の贈与は特別受益に含まれません。
生計の資本としての贈与はケースバイケースで判断されるため、慎重な確認が必要です。
特別受益の持ち戻しを主張できる期間
令和5年4月以降に発生した相続では、相続開始から10年を過ぎると特別受益による持ち戻しを原則主張できません。
- 10年以内に家庭裁判所で遺産分割の調停や審判を申し立てていれば、主張可能
- 相続争いの長期化を防ぐためのルールです
特別受益を考慮した相続を希望する場合は、早めに準備して手続きを行うことが重要です。
まとめ
- 特別受益とは、相続人が生前に受けた贈与や財産のこと
- 持ち戻しとは、相続財産に特別受益を加えて相続分を再計算すること
- 持ち戻しにより、相続人間の平等が保たれる
- 日常生活費は特別受益に含まれない
- 主張できる期間は相続開始から10年以内
特別受益や持ち戻しの計算は複雑な場合も多いため、行政書士や弁護士などの専門家に相談すると安心です。
