相続欠格と相続廃除とは|行政書士がわかりやすく解説
民法では、誰が相続人になるのかが定められていますが、一定の場合にはその相続権を失うことがあります。
それが「相続欠格」と「相続廃除」です。
この記事では、両者の違いと注意点を、相続手続きをサポートしている行政書士の視点からわかりやすく解説します。
(※本記事は一般的な説明です。個別の判断が必要な場合は、弁護士など専門家へご相談ください。)
相続欠格とは
相続欠格とは、被相続人に対して著しく背信的な行為をした相続人が、自動的に相続権を失う制度です。
法律上当然に相続資格を失うため、被相続人(亡くなった方)の意思とは関係なく適用されます。
そのため、相続欠格者は遺産分割協議にも参加できず、仮に遺言書で遺贈先に指定されていたとしても財産を受け取ることはできません。
なお、相続欠格者の子などによる代襲相続(欠格者に代わって相続すること)は認められます。
相続欠格となる主なケース
以下のような行為があった場合、民法上、相続欠格に該当します。
- 被相続人、または他の相続人を故意に殺害・殺害しようとした場合
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、犯人を告発・告訴しなかった場合
- 詐欺や脅迫によって、被相続人の遺言の作成・撤回・変更を妨げた場合
- 詐欺や脅迫により、被相続人に遺言を作成・撤回・変更させた場合
- 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合
これらはいずれも「被相続人の意思を不当にねじ曲げる」重大な行為として、相続権を自動的に失います。
相続廃除とは
相続廃除とは、被相続人の意思に基づいて特定の相続人から相続権を奪う制度です。
相続欠格と異なり、家庭裁判所の審判を経て相続権を失うことになります。
つまり、
- 相続欠格 → 法律上当然に相続権を失う
- 相続廃除 → 被相続人が申立てを行い、裁判所が判断する
という違いがあります。
相続廃除の対象者
相続廃除の対象は、遺留分を持つ推定相続人に限られます。
具体的には次のとおりです。
- 配偶者
- 子ども
- 父母などの直系尊属
一方で、遺留分を持たない兄弟姉妹は、相続廃除の対象にはなりません。
相続廃除が認められる主な理由
相続廃除が認められる理由(事由)は、主に次のような場合です。
これらはあくまで一般的な例であり、最終的には家庭裁判所が判断します。
- 被相続人に対して虐待や重大な侮辱をした場合
- 被相続人の財産を不当に処分したり、多額の借金を作って迷惑をかけた場合
- 配偶者として著しい非行があった場合(不貞行為、悪意の遺棄など)
なお、相続廃除の申立てが認められた後でも、被相続人の意思によって廃除の取消しをすることも可能です。
相続廃除となっても、相続欠格と同様に代襲相続は認められます。
相続欠格と相続廃除の違いのまとめ
| 項目 | 相続欠格 | 相続廃除 |
|---|---|---|
| 根拠 | 法律上当然に発生 | 被相続人の意思によって申立て |
| 手続き | 不要(自動的に権利喪失) | 家庭裁判所の審判が必要 |
| 対象者 | 行為に及んだ相続人 | 被相続人が廃除したいと考える推定相続人 |
| 代襲相続 | 認められる | 認められる |
| 取消し | 不可 | 家庭裁判所により取消し可能 |
まとめ
- 相続欠格は、被相続人への重大な背信行為があった場合に当然に相続権を失う制度です。
- 相続廃除は、被相続人が特定の相続人を相続から外したい場合に、家庭裁判所へ申立てる制度です。
- いずれの場合も、欠格・廃除となった相続人の子などは代襲相続が可能です。
- 確実に特定の相続人に財産を渡したくない場合は、遺言書の作成が最も有効です。
